私とナツキはパーキングに停めていたベンツに乗り込み、
ナツキは車をそこから退かしただけで、
すぐに路肩に停車した。


ナツキはずっと無言で、
怒っているのが空気で伝わって来る。



ただ、そのナツキの怒りの感じが、
私に酷い事をしていた松永先生に対してではなくて、
なんとなく、私に向いているような気がする。



「ナツキ、なんで私に怒っているの?」



「へぇー、未央はそんなバカじゃないんだ」


その私を見るナツキの目は、
やはり私に怒っている。



「一体、なんで私に怒ってるの?」




「やっぱ、バカなんだ…」



そう言ってため息をつかれて、
なんだか、私も少しナツキに対して腹が立って来る。