「うわぁ、凄い」


子供みたいにその水槽に駆け寄ってしまう


あ、とナツキの存在を思い出し振り返ると、
ナツキはそんな私を笑いながらゆっくりとこちらに歩いて来る


なんだか、恥ずかしい




「だって、凄い大きい水槽だから・・・」


何故か言い訳をしてしまう


だから、はしゃいでも仕方ないでしょうって




「それだけ喜んでくれるのなら、連れて来て良かったかな」


ナツキは私じゃなくて、その巨大な水槽に目を向けている


私も、今度はその水槽の方の存在を思い出したかのように視線を向けた



壁一面が水槽で、とにかく大きくて、
巨大なサメがうじゃうじゃと泳いでいて、
見ていると段々と怖くなる


館内全体、今いる空間も真っ暗だから、まるで海の中にいるみたいで




「怖いな・・・」


そう漏らすと、ナツキはそんな私の手を握ってくれる


驚いてナツキを見るが、ナツキは私じゃなくて相変わらず水槽を眺めていて、
こうやって女性の手を握るのもごく自然でスマートに行ってしまう




太平洋の海を再現したその巨大水槽の前、人はまばらで私とナツキの周辺には誰も居ない


今日が平日だからか、水族館の中は人が少ないみたい