白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

 華ちゃんにだいぶ近づいたところで、黒霧が慌てた様子で言った。

 確かに橋の欄干に、茶色っぽい物体がぶらぶらしているが見える。

 喜助の近くには華ちゃんがいたけれど、欄干にはそれなりの高さがあるためか、車いすに座っている彼女の手は喜助に届かないようだった。


「ほんとだ! あの模様は……喜助だよね!?」

「喜助……! 川に落ちちゃう! 早く助けないと!」


 私と佐助のそんな会話の後、走り出す私たち。

 だけど、喜助はすでにしばらくの間ぶら下がっていたみたいで、丁度力尽きてしまった。

 かわいらしい前足が橋の欄干から離れてしまう。

 ダメ!

 落ちちゃう!

 そう思った私だったけれど。


「ね、猫ちゃん!」


 ――なんと。

 華ちゃんが、立ち上がったのだった。

 歩く練習を諦めかけていて、立つのだって難しいんだって言っていた、華ちゃんが。

 車いすから、立ち上がったんだ。

 そして華ちゃんが手を伸ばして、すんでのところで喜助の前足を掴んだ……かのように見えたけれど。

 華ちゃんがバランスを崩してしまって、その手は喜助に届かなかった。