白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

 黒霧が、無言でじっと私を見つめてくるので、戸惑ってしまう。


「……枝乃、お前って猫に優しいんだな」

「え? 優しいっていうか、好きだから当たり前のことをしてるっていうか……」

「いや、優しいだけじゃねえ。佐助と話してるのを見て思ったんだけど、お前は猫の気持ちをちゃんと理解しようとしてた。願いを叶えるために行動までしてくれた。ここまで人間にも猫にも分け隔てない態度を取る人間なんて、初めて見た」

「そ、そうー? なんか褒めてくれてるよね?
ありがとう。あはは」


 まさか黒霧に褒められるなんて思っていなかった私は、くすぐったくなって誤魔化すように笑ってしまう。

 ーーすると。


「…………。最初はお前のこと、まあ顔も悪くないし、こいつが嫁なら別にいいかくらいに思ってたんだ」

「え……?」


 急に話が変わったので、私はますます戸惑った。

 なんで嫁の件の話になるわけ?

 それになんか黒霧……近いんだけど。

 悔しいけど顔面偏差値は恐ろしく高い黒霧に、至近距離で見つめられてしまって。

 私の心臓はドキドキと波打った。


「でもお前が猫にとっていいやつなら、俺はお前を……」

「え、え……」


 そう言いながら、黒霧が私に手を伸ばしてきた。
 
 大きく真っ青な宝石のような瞳で、私を見つめながら。

 その視線はどことなく熱っぽく見える。

 え、何この雰囲気……。

 な、なんだか恋愛っぽい気配……?

 と、私がいつもと雰囲気の違う黒霧にタジタジになっていると。


「はーい、ダメですー。抜け駆け禁止だよーん」