白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

 私は「黒霧~」とやる気ない声で彼の名を呼びながら、のろのろとした足取りで敷地内を歩き回る。

 するど、境内に生えている木の太い枝の上で、黒霧は寝そべっていた。

 地面からだいぶ高い場所にあるのに、よくあんなところで寝っ転がれるなあ。

 さすがは猫の神様候補だ。


「……黒霧。ご飯できたって」


 そんな彼に向かって、私はつっけんどんに言う。

 すると彼は、私の身長よりも高い場所にある木の枝の上から飛び降り、難なく地面に着地した。

 やっぱり猫なんだなあ……。


「…………」


 黒霧は無言のまま私の方を気まずそうにちらりと見ると、目を逸らした。

 学校で「大嫌い」って言っちゃったもんな、私……。

 黒霧の言動には確かに苛立ったけれど、さすがに悪いことを言っちゃったよね。

 夕飯の席でも気まずいのは嫌だし……。

 うん、ちゃんと謝ろう。


「ご、ごめん!」

「すまん!」


 ――え?

 私が謝罪の言葉を口にしたのとほぼ同時に、黒霧からも謝られた。


「どうして、黒霧が謝るの?」


 不思議に思って尋ねると、黒霧は罰悪そうな顔をしてこう言った。