そんなこと、私にだって分からなかった。
私は生まれてこの方大きな病気になったこともないし、歩けなくて困ったこともない。
神社である家が嫌だとか、お父さんが信仰深くてうざいとか、そんな悩みしかない。
自分が健康であることが当たり前すぎて、そうじゃなくなった場合のことなんて考えたことすらなかった。
「とりあえず、今日はもう帰ろうよ。そろそろ佐助にかけた術も解けて、猫に戻っちゃうし。そういう場面を誰かに見られたら、ちょっとまずいんでしょ?」
華ちゃんと佐助のやり取りを静観していた白亜が、いつもの穏やかな調子で言う。
白亜は今のこと、どう思ったんだろう。
「あ、そっか。じゃあ帰ろうか、佐助」
「……うん」
落ち込んだ様子だったけれど、佐助は素直に頷く。
そしてトボトボと、猫屋敷神社の方向へ向かって彼は歩き出した。
その後に、私と白亜は続いた。
「ねえ、白亜。どうしたらいいのかなあ、華ちゃん……」
少し前を歩く佐助の背中をちらりと見て、私は言った。
すると白亜は、「うーん」と小さく唸る。
私は生まれてこの方大きな病気になったこともないし、歩けなくて困ったこともない。
神社である家が嫌だとか、お父さんが信仰深くてうざいとか、そんな悩みしかない。
自分が健康であることが当たり前すぎて、そうじゃなくなった場合のことなんて考えたことすらなかった。
「とりあえず、今日はもう帰ろうよ。そろそろ佐助にかけた術も解けて、猫に戻っちゃうし。そういう場面を誰かに見られたら、ちょっとまずいんでしょ?」
華ちゃんと佐助のやり取りを静観していた白亜が、いつもの穏やかな調子で言う。
白亜は今のこと、どう思ったんだろう。
「あ、そっか。じゃあ帰ろうか、佐助」
「……うん」
落ち込んだ様子だったけれど、佐助は素直に頷く。
そしてトボトボと、猫屋敷神社の方向へ向かって彼は歩き出した。
その後に、私と白亜は続いた。
「ねえ、白亜。どうしたらいいのかなあ、華ちゃん……」
少し前を歩く佐助の背中をちらりと見て、私は言った。
すると白亜は、「うーん」と小さく唸る。



