白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

 そんなこと、私にだって分からなかった。

 私は生まれてこの方大きな病気になったこともないし、歩けなくて困ったこともない。

 神社である家が嫌だとか、お父さんが信仰深くてうざいとか、そんな悩みしかない。

 自分が健康であることが当たり前すぎて、そうじゃなくなった場合のことなんて考えたことすらなかった。


「とりあえず、今日はもう帰ろうよ。そろそろ佐助にかけた術も解けて、猫に戻っちゃうし。そういう場面を誰かに見られたら、ちょっとまずいんでしょ?」


 華ちゃんと佐助のやり取りを静観していた白亜が、いつもの穏やかな調子で言う。

 白亜は今のこと、どう思ったんだろう。


「あ、そっか。じゃあ帰ろうか、佐助」

「……うん」


 落ち込んだ様子だったけれど、佐助は素直に頷く。

 そしてトボトボと、猫屋敷神社の方向へ向かって彼は歩き出した。

 その後に、私と白亜は続いた。


「ねえ、白亜。どうしたらいいのかなあ、華ちゃん……」


 少し前を歩く佐助の背中をちらりと見て、私は言った。

 すると白亜は、「うーん」と小さく唸る。