白猫王子と俺様黒猫～猫神の嫁なんてお断りですっ！～

　私はいつもの調子で、喜助を撫でている華ちゃんに向かってそう話しかけた。

　華ちゃんははっとしたような顔をすると、私の方を向いた。

　車いすに座っているから私を見上げる形になる。

　小学校高学年くらいの、華奢でボブカットのとてもかわいらしい子だった。

　佐助のやつ、こんなかわいい子に惚れていたんだ。

　見る目があるなあなんて、こっそりと私は思う。


「こ、こんにちは。よくここにいる猫なの」


　華ちゃんは少し戸惑っていたようだけれど、笑顔でそう答えてくれた。


「そうなんだ。まだ子猫だね」

「うん、いつもはもう一匹いるんだけど……。今日はいないの。お散歩かな？　迷子になったりしていないかな」


　心配そうな顔になって華ちゃんが言う。

　――すると。


「それは俺……あ、なんでもない」


　私の隣に立っていた佐助が、つい自分の正体を明かすようなことを言おうとして私はドキリとしたけれど、佐助本人が「まずい」と気づいたみたいで、途中で言葉を止める。


「さ、さっき似たような柄の子猫を近くで見たよ！　それがもう一匹じゃない？　だから心配しなくていいと思う！」