白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

「私、黒霧の嫁になるなんて言ってないってば!」

「あ!? 俺が猫神になるには必要だって言ってんだろ!」

「そんな愛のない結婚お断り! 断固拒否します! もう、そんなことばっかり言っている黒霧なんて、大っ嫌い!」


 ”大っ嫌い”に、とても力を込めて私は叫ぶように言った。

 ――すると。


「……っ!」


 黒霧が言葉を詰まらせる。

 一瞬、歯がゆそうな顔をしたように見えて私は虚を衝かれる。

 や、やば。

 言い過ぎたかな……。

 ヒートアップしてしまって、思わず心にもないことを言ってしまった自分に私は後悔する。


「あ、えっと。あの……」

 
 謝った方がいい気がしたけれど、結婚とか嫁とか言われるのはやっぱり嫌だったから、うまく言葉が見つからずに口ごもってしまう私。

 すると黒霧は、ぷいっと私から顔を逸らした。


「ふ、ふん。俺だっててめーのことなんざ嫌いだ!」


 吐き捨てるようにそう言うと、乱暴な足取りで黒霧は廊下を歩き、教室の方へと戻ってしまった。

 げ、やばい……。

 黒霧とは教室でも家でも一緒なのに、大喧嘩しちゃった……。