白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

「何を言ってるんだ。猫神様はいつか枝乃のところにやってくるかもしれないんだぞ? 枝乃は、猫屋敷神社の巫女として……」


 わー、めんどくさいのが始まった。

 お父さんは、私が神社の娘として後ろ向きな行動をすると、決まってこの話をしてくる。

 猫屋敷神社に代々伝えられている、伝説を。

 伝説の内容はこうだ。

 猫神様は世代交代をする時に、この神社にやってくる。

 その時に、神社に代々伝えられている黄金の猫じゃらしという宝具を、その時に神社にいる未婚の女性――つまり巫女が神様に渡す儀式が行われるんだって。

 今、この神社には私とお父さんとお母さんがしかいない。

 だからもし、猫神様が今神社に来たら、黄金の猫じゃらしを渡す巫女は私ってことになる。


「その話はもう何百回も聞いたよー!」


 飽き飽きして、私は言う。

 だけどお父さんは、勢いよくこう返してきた。


「枝乃に巫女としての自覚が芽生えるまで、父さんは何百回でも言うぞ!」

「ええ……! じ、自覚なんて芽生えることはないので諦めてくださいっ! じゃっ!」

「おい枝乃! まだ話は終わって……」