白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~

 こんな正体不明の人が、もうひとりいるってこと!?

 ひとりだけでもわけわかんなくてついていけないのに!


「と、とにかく本殿の方に行くね! お父さんの悲鳴も聞こえたし……」


 謎のイケメンにそう言うと、私は駆け足で本殿へと向かった。

 本殿の中に入ると、おろおろした様子のお父さんと、首を傾げているお母さんと――。

 黒髪で色黒の、勝気そうな少年がひとり。

 もちろん私の知らない顔だ。

 だけど白髪のイケメンと同じくらい、黒髪の彼もとてもかっこいい。

 間違いなく、白髪のイケメンが言っていた連れとは今目の前にいる彼のことだろう。
 

「だから俺がその猫神候補だっつってんだよ。さっさと黄金の猫じゃらしをよこせ」

「そ、そんなこと……!」


 乱暴な口調で言う黒髪の彼の言葉に、困った顔で答えるお父さん。

 ――って、は?

 何を言っているの?

 猫神候補だ?

 黄金の猫じゃらしをよこせ?

 お父さんから毎日耳がタコになるくらいに聞かされた、猫屋敷神社の伝承に関係する言葉ばっかり、黒髪の少年から聞こえてきた。

 一体どういうこと……?