「かわいーっ!!!!」
楓様は突然5歳らしくはしゃぎながら、私をギューっと抱きしめた。
さっきの不安が飛んで、ほわほわな気持ちになってしまう。
「で?で?何で執事なのか教えなさいよ!」
楓様は私の隣にちょこんと座りなおした。
「その前に名前だわ。まずあなたの本名は?藤咲泉は仮名でしょ?」
「和泉藤乃です」
「ふじの!可愛い!楓よりも可愛いわ」
「そんな可愛くは無いです」
「それで?何で執事やってんの?」
「それはまぁ、色々ありまして」
「聞かせて聞かせて!」
「ははぁ」
私は家が貧乏な理由や、この仕事を見つけた経緯などを詳しく話した。
楓様は目を輝かせながら、話を聞いている。
「なるほどね、頑張ってるじゃない。お金出そっか?」
「いやいやいやいや!!!とんでもないです!」
「あたしが大人になって社長になったら雇ってあげる」
全部話すと、楓様とはすっかり打ち解けた様な気がした。
この空気感が少し心地いい。
「藤乃はあたしの本性黙っててね!あたしは藤乃の正体黙ってあげるから」
「よろしいのですか?」
「なにが?」
「私、ルールを破って男装までしているのに」
「大丈夫でしょ。あたし藤乃の事好きだし、口が固い女の子なのよ!」
「ありがとうございます楓様」
「じゃあ指切りしよっか!」
楓様は小指を差し出した。
「でもね、裕哉お兄さまを狙っちゃダメよ。あたしの将来の夢はね、裕哉お兄さまのお嫁さんだからね!」
「あんな厳しい方、好きになりませんよ~」
やっぱり楓様は5歳なだけあって子供っぽい所もある。可愛いな
「藤乃、指切り!」
「「ゆーびきーりげんまん うっそついたら針千本」」
「やだ!千本飲むのは痛いわ」
「裕哉様と同じ反応を」
「嘘ついたらー…ぬいぐるみ1個あげるわ。指切った!」
本日二度目の指切りだ…!

