私は和泉藤乃(いずみ ふじの)

ここ、五月(さつき)学園の高等部音楽科ヴァイオリン専攻の1年生。

五月学園はとにかく大きい。

ここ近辺で幼稚園から大学院まで建っていて、私のいる音楽科だけでも1つの高い高いビルになっている。

ビルの中に高校と大学の音楽科、ホールが大小6つもあるから、ほんとすごい。


スケールが大きいだけあって、学費もとても高い。

当然ながら、同級生はみんなどこかのお金持ちの御子息だ。


私はというと…お金持ちではなく、音楽科で唯一の庶民だったりする。

どうしてもここで学びたかった私は、年に1人取るか取らないかの特待生枠をなんとか手に入れて、学費無償にしてもらっている。


特待生枠は今後の成績によって取り消されるかもしれないので、昼休みも練習が欠かせない。

ちょっと、友達と話す時間も欲しいけど…

周りはみーんなお金持ち。

庶民である私なんて眼中にない。


「なんて考える暇はないぞ!」


私は今日も昼休みをヴァイオリンと過ごす。