「ねぇ、泉くん?聞いてる?」
「かっ、楓様…??」
さっきまでの小さな女の子から一変、眼差しや雰囲気が大人の女性のようになっていた。
頭の整理が追い付かなくて、フリーズしそう。
「いひひ、驚いてるのね。じゃあいいわ。あたしから教えてあげる」
ベッドの上で正座する私に対して、あぐらをかいてる楓様は妖しく微笑んだ。
「これがあたしの本性。家族や使用人の前では5歳を演じてるの」
「ほ、ほ、ほ、ほ、本性!?」
楓様は何も言わずにこちらを見る。
瞳から「これが私なの」と存在証明するような、力強いものを感じる。
「く、薬で子供になった高校生、とかじゃないですよね」
「私は本当に5歳よ」
「あばば、ばば」
自分でも出したことないような声を、楓様は爽やかに笑う。
大人以上に大人すぎる…!!
「色々と驚いてるわね。でもこっちの方が楽なの」
「楽ならばよろしいのですが…しかし、なぜ僕に」
「それはね。あなたと仲良くなれそうだから!あなたの秘密を知ってるから!」
「僕の秘密?なっ、なんのことでしょうか?」
楓様は微笑んだまま、私の方へ近づいてきた。
逃げたいけど、目力に捉えられて動けない。
楓様は私の膝にそっと手を置くと、ゆっくり、小さな口を開いた。
「藤咲泉、あんた女でしょ?」
「えっ」
初日にしてクビを覚悟した瞬間だった。

