「紅茶の淹れ方は誰かに教わってもいいからな。ハンデだ」
「ハンデでしょうか」
「ハンデだ」
そう話す裕哉様の後ろには、小さい女の子がいた。
裾がひらひらしたオレンジのワンピースを着た幼稚園児くらいの可愛い女の子。
この子が、妹の楓様かな?
「裕哉様、あの、後ろの方は…」
「うしろ?ああ」
裕哉様は後ろにいる女の子を見つけると、微笑みながら女の子の頭を撫でた。
なにそれ!
私への意地悪な態度と大違い!
とっても優しくなった裕哉様は、女の子を自分の前に出した。
「自己紹介してごらん」
「わかりました。ゆうやおにいさま」
やっぱり妹の楓様だ。
育ちの良さから来る上品さと、子供らしい可愛いさに私も微笑んでしまう。
「さつきようちえんの、ねんちょうさんの、しおういんかえでです。5さいです。よろしくおねがいします」
楓様は言い終えるとペコリとお辞儀をした。
なんて可愛んだ!
話し方も動きもふわふわしてて、天使みたい!!
「新しく執事になった藤咲泉です。楓様、こちらこそよろしくお願いします」
「いずみくん?」
「はい」
楓様はくるんと後ろの裕哉様の方へ向いた。
「いずみくんっておんなのこみたいだね!こえとか、おかおとか、とーってもかわいいね!」
楓様がキャッキャッと喜びながら言う。
私は一瞬、女という事がバレたのかと思ってヒヤヒヤした。
でも裕哉様は妹の喜びに対して「そーだなー」と流してる程度だからバレていない。
よかった…
「かえで、いずみくんとあそびたい!ゆうやおにいさま、いいですか?」
「いいよ」
「やったー!いずみくんおいで!」
私は楓様に手を掴まれると、引っ張られる様にして裕哉様の部屋を後にした。
紅茶の練習したいのに…!