夕陽を浸したような綺麗な色の紅茶。
それと、近くにあった角砂糖をお盆に載せて、居間のソファにいる裕哉様のもとへ運んだ。
「裕哉様、紅茶をお淹れ致しました」
「置いといて」
「はい」
私は指差された先のテーブルに紅茶と角砂糖を置いてから、片付けをしにキッチンへ行った。
裕哉様、喜んでくれるといいな。
「藤咲の淹れた紅茶は美味しい」とか言ってくれるのかな。
期待に胸を膨らませていると、
「おい子犬」
裕哉様がキッチンへ来た。
キッチンに来るほど美味しかったのかな。
思わずにやけてしまう。
「えへっ、片付けはこちらでやるので」
「笑うな気持ち悪い」
そんな期待とは裏腹に、裕哉様は長い溜め息をついた。
「不味い」
…へっ!?
「茶葉を無駄にするつもりか馬鹿」
「とんでもないです」
裕哉様、もしかして怒ってる?
「怒っていますか?」
「怒るというかなんていうか…子犬」
「藤咲です」
「やる気無いなら帰れ」
突然…
こんなこと言われるなんて思わなくて、頭がフリーズしてしまいそうになる。
「自分から名乗り出た仕事すら満足に出来ないならいいよ」
「申し訳ございません」
負けちゃダメだ藤乃。
生活がかかってる。
あとなんか悔しい。

