「この屋敷にはそれぞれの職務を取り仕切る執事が8人います。今からあなたはその一人として、裕哉様のお世話をして頂きます」
「はい」
「紫桜院家の屋敷はいくつかございますが、この皐月邸には代々本家の血筋の方が住んでおります。くれぐれも粗相をしでかさないようにしてください」
「承知しました。がんばります!」
「もう少し詳しくお話ししましょう。この家のご主人様は4人。紫桜院家の当主の裕一郎様。そのご子息で、紫桜院ホールディングスの社長であられる裕大様。そしてそのご子息の裕哉様と楓様です」
「はい」
「覚えました?」
「はい。当主の裕一郎様と、ご子息で社長の裕大様、そのまたご子息の裕哉様と楓様ですね。奥様はいらっしゃらないのでしょうか?」
「お亡くなりになりました。他に質問は?」
「も、申し訳ございません」
「…ここからが一番大事な所です。心して聞いてください」
「はい」
「あなたがお使えする裕哉様についてです。男性とはいえ念の為に注意しますが、これだけは守ってください」
「はい…」
「裕哉様に、恋愛感情は絶対に持たないでください」
「絶対に…」
「無いかもしれませんが、もし、あなたが女性だったら場合、即刻解雇します」
「クビに…」
「恋愛禁止。それだけは必ず守ってください」
「承知、しました」