面接を終えて帰宅した。
おばあちゃんに見つからないように、男の泉から藤乃に戻って、いつものように家事をして、お風呂に入った。
お風呂の中でふと不安を感じて泣きそうになったけど、めちゃくちゃ顔にシャワーを当てて、どうにかやり過ごした。
くよくよしたとき、どうしてたっけ。
おばあちゃんには心配かけられないし、必要以上に沙耶に話しても、しつこいって思われるかもしれないし。
お風呂から上がると、そのタイミングを待っていたかのようにスマホがブルブルと震えだした。
知らない番号からの着信だ。
お屋敷からかな?
早い気がするけど、これはきっと不採用の電話だろう。
「ふぅ…」
私は心の準備をして、電話に出た。
「もしもし」
『藤咲泉くん?』
「はい」
電話からは誘導してくれたメイドさんの声がした。
『紫桜院家、皐月邸の白木です。こんばんは』
「こんばんは」
『…あの、先程はどうも』
「いえいえ」
さっきのメイドさん、白木さんのすねたような可愛い顔が浮かぶ。
『えっとね、これも…』
「これも」不採用ってことか。
わざわざ連絡くれるだけありがたいと思わないと。
『ん、違うわ、藤咲くん。なんか信じられないんだけど、採用よ』
「はい?」
?????
「不採用」を「採用」って聞き間違いをしたのかな
『藤咲くん、あなた採用になったの』
「えっ?」
『私の見てる書類にはちゃんと採用と書かれてる。おめでとうございます』
「わっ」
驚き過ぎて、何かが喉に詰まったように声が出なかった。
『えっ、今度はガチ泣き?えっ、ごめんなさい』
「いや、あのそうじゃなくて、あの、ありがとうございます」
『いえいえ。えっとー、今後はね……』
その後、白木さんからいくつか今後の予定を教えてもらい、通話が終わった。
私は待ち受けに戻ったスマホを見ながら変な余韻に浸っていた。
信じられない。
私が執事になれたなんて、信じられない…!!!
おばあちゃんにめちゃくちゃ報告したいけど、めちゃくちゃ寝てる!
でもおばあちゃん、紫桜院グループ嫌いなんだ……
あ、そうだ。沙耶に連絡しなきゃ!
私はすぐさま沙耶に電話をかけた。
執事だ!執事になれたんだ!