「この仕事の志望理由は?」
「はい、あの」
金目当てだなんて死んでも言えない。
私は履歴書に書いた内容を思い出した。
「他のアルバイトよりも貴重でためになる体験だと思ったからです」
「それでは私達執事の仕事が職場体験だと言いたいのですか?」
「とんでもないです! こっ、こちらのお仕事が内定したら、一生懸命働きます!」
なにこの面接、超ハードモードだ!
「内定しなかったら?」
普通こんなこと聞く?
「ふっ、普通のアルバイトで、一生懸命働きます」
「なるほど」
何が「なるほど」なの!?
相手の意図が読めなさすぎて、すごい怖い。
「執事経験は無し…ですか」
「…はい」
やっぱり経験者の方が採用されやすいんだろうな。
もうどうにでもなっちゃえとさえ思ってきた。
「執事の経験は、全く無いのですが」
私は最後まで言い切れるように、こぶしをギュッと握った。
「でも、しかし、意欲は誰にも負けない自信があります!誰よりも沢山覚えて、誰よりも沢山勉強して、必ず、ご主人様に信頼して頂けるような、立派な執事に、僕はなります!」
遠山さんはじっと私を見てきた。
私のこと、私の考えていること、何もかも全部が見透かされてるようで、いい気がしない。
「確認ですが、あなたは男性ですよね?」
「はい」
「声も高くて顔立ちも女性みたいなので、少し疑ってしまいました。申し訳ありません」
「いえ」
なんだろう。どうしてこんなに性別が厳しいんだろう。
「わかりました面接はこれで終了です。退室してください」
「…ありがとうございます」
私は椅子から立ち上がり礼をした後、執事長室を退室した。

