門の中に入ると広大な広場を挟んで、お屋敷があった。

門の外でさえ圧倒された建物に入ろうとしてるんだ。

私は緊張を踏みしめながら、看板の指す方へ、面接会場へ向かった。

お屋敷の裏口のようなところだろうか。

既に扉が開いていて、メイドさんが1人立っていた。


「どうぞお入りください」

「しっ、失礼します」


私よりも少し年上そうなメイドさん。

優しい笑顔で私を案内してくれる。

従業員専用通路と思わしき、ドアが沢山並んだ長い廊下。

所々で、メイドさんや使用人の人たちが出入りしている。

紫色のふんわりとしたワンピースに白いエプロンを着ているメイドさん達は可愛かった。


メイドさんに見惚れている内にどうやら面接会場に着いたようだった。

「執事室」の看板がついた扉の中には、また小さめの廊下といくつかの扉があり、壁際に椅子が並んでいる。


「こちらにおかけになってお待ちください」


メイドさんが優しく促したので、私はそこに座ろう彼女の横を通り過ぎた時、


「アンタは受からないわ」


と呟く様な声が耳に入った。

私は少し驚いてメイドさんの方を向くと、メイドさんはこちらを振り返らず、颯爽と長い廊下の方へ出ていった。

さっきのあの一言は、空耳ってことで…いいんだよね?