「男の子の名前、何かないかな」
「いざ考え始めると難しいね〜」
うーんと、二人で考えていると、沙耶がパッと何かを思いついた。
「和泉フジオは?」
「考えてそれ?」
「お兄さん意外と辛口」
「なんだろな。リクトとかさ、名前はイケメンでありたい」
「鏡で自分を見てみ?リクト顔?」
「んー…タツヤかな」
「フジオだよ」
話はなかなか進まない。
「和泉藤乃、和泉藤乃」
「なんか変な気分になるから、フルネーム連呼しないで」
「和泉藤乃なんだよな〜あっ!」
「なに?」
「この見た目ってさ、イズミくんって感じしない?」
「イズミくん」
沙耶は紙に「泉」と書いた。
確かに、このかっこいいとは言い難い感じの見た目には合う気がする。
「私の名字を名前に持ってったから、名字は『藤』つけちゃう?」
「フジオ泉〜?」
「フジオは無しだって」
私はペンを持ち、『泉』の左に『藤』を書いた。
「フジオじゃなくて、フジノイズミ?」
「そしたら名前が2つ並んでるみたい」
「名字っぽい名字」
「うーん、あっ!フジサキは?」
私は紙に『藤崎』と書いた。
『藤崎 泉』
ありっちゃ、ありだ。
それを見た沙耶が咄嗟にペンを取った。
「花が咲く方にしよ!可愛いから」
「えー?」
沙耶に書き換えられ、『藤咲 泉』になってしまった。
「藤が咲く泉で、藤咲泉!」
「藤咲泉」
可愛い名前だけど、不思議とこの見た目に合うような気がしてくる。
沙耶が目の奥を輝かせて言い始めた。
「藤咲泉!」
「藤咲泉」
「藤咲泉!」
「藤咲泉!」
「あなたの名前はー?」
「藤咲藤乃!」
「ちゃうで、お兄さん」
名前の定着にはもう少し時間が掛かりそうだ。