「よっしゃ。じゃ、片付け、早く終わらせようぜ」
その友人は、1秒も惜しいとでも言うように、手際良くゴミの分別を再開する。
このサークルは、どんな形であれ、みんなが一生懸命だ。
俺はきっと、こういう雰囲気を好むんだな。
友人たちの姿を見ていると、自然と頬が綻ぶ。
「え。今、直江くん、笑った?」
勘の鋭い彼が、瞬時に何かを察知する。
首がこちらにグリンと回って、非常に怖い。
「気のせい、気のせい」
「いや! 今、微笑んでた、絶対」
「怖いって。しかも、距離近いし。変態か」
「ちょっと! 誰が変態よ!」
「お前だよ」
距離を詰めてくる友人とじゃれ合う。
久しぶりに、腹の底から声を出して笑っている。
素直に楽しい。
すると、「なぁ」と声を掛けられる。
「誰か、絆創膏持ってねぇ?」
「あー、持ってないわ。どうした?」
そう言って、友人が歩み寄る。
「ちょっと空き缶で手、切ったっぽい」
確かに、右手の人差し指から出血している。
確信は無いが、絆創膏を持っていそうな人物が浮かぶ。
「俺、持ってそうな人に、聞いてくるわ」
それだけ言って、あの人の所へ行ってみる。
「直江くんってさ……」
「うん」
「サッカー部から来たって言うから、てっきり就活のネタに、駆け込み寺の感覚でうちに来たんだって思ってたんだよな」
「それは俺も思ってた」
既に離れていた俺には聞こえていない、友人同士の会話。
そんな風に思われていたなんて、心外だ。
と、いつか笑って、言ってやろうと思う。



