私は自宅に向かって走り出した。

「あのっ!すみません。」

・・・・?
わたし?

辺りをキョロキョロと見渡すと
スーツ姿の男の人が
困ったような顔でこちらを見ていた。

「すみません、道に迷って困ってて…」

あ、そうなんだ。
近所だから分かるかもしれない。

「どちらまでですか?」

「この辺にカフェが出来たって聞いたんですけど‥
 友達と待ち合わせしてるのに、場所が分からなくて。
 マップにも出て来なくて困ってるんです。」

この公園に新しく出来た可愛いカフェが頭に思い浮かぶ。

「あぁ、分かります。ここから‥」

そう行ってカフェがある方を振り向き、男性に背を向けた。

その瞬間・・・・

口をタオルのような物でふさがれ
暗闇に連れ込まれた。

「・・・っ・・やっ・・・」

必死に抵抗し、口元のタオルから逃れようと
顔を振っても、物凄い力で逃れられない。

「やっ・・・・」

怖くて声が出せない。

誰か助けて
誰か助けて
おねがい・・・

今思い返せばおかしいのだ。
カフェの営業は夕方まで。
こんな時間にはもう閉まっているのに。
何で、気が付かなかったのか。

目からボロボロと涙がこぼれる。