「……」

「それに、お父様、愉快な方ですよね。」

「ゆ、愉快…」

「紫先生のことが大好きで、息子さんのことも大好きで、それがよく伝わって。
発表会の衣装の相談にも乗ってくださるんです。」

「衣装。」

それ、単なる趣味だから。

「いつも保護者の待合室にアルバムが置いてあって、衣装のカタログみたいな感じなんですけど、それを見せてくださるんです。
ココアブラウンの髪の男の子と、お目目がパッチリな女の子がどのページにも載っていて。
最初はわからなかったんですけど、あれ、優先生と美衣子先生ですよね? 
りさ、プリンセスが大好きで、あのアルバムを見て、あんな衣装を着れるならって、そんな動機でスクールに入会したんですよ。
もちろん今はピアノが大好きなんですけどね。」

「そ、そうですか…。」

美衣子まで…。
それはさっき頭に浮かんだ、過去に俺達が出た発表会の衣装だ。
大抵、一回の発表会に、美衣子とセットで3着以上用意されていた。
全部父親の趣味だ。

もう初耳な事ばかりで衝撃的過ぎて、いっぱいいっぱいだ。好き放題やってるな、あの人。