でも実際は違った。
美衣子は悩んでいた。
もうずっと前から。

2人の将来を本当にちゃんと考えていたのは美衣子だ。
俺は自分のことだけで精一杯で、漠然とした将来もまともに描けてなかった。

それに、美衣子の悩みに気づかず、寄り添うことも出来なかった。
振り返ってみても、最低だったと思う。

再会して、振られた本当の理由を知った。
子供を持つことが美衣子の望みなら………
そう思って、今まで1人で治療させてしまっていた罪滅ぼしと、絶対に願いを叶えてやりたい思いで、子作りに励んだ。
結果、思いがけず早く、子供を授かることができた。

俺は授かってみて初めて現実が見えた。

こんなに……こんなに嬉しいものだと思わなかったんだ。
美衣子のお腹に、俺の血を分けた子供がいる。その感動は想像していたものより遥かに大きなものだった。
この子を通して、俺達は本当に家族になるんだ。そんな想いが日に日に強くなる。

それになにより、美衣子のお腹にいるのは、“俺の”子供なんだ。それが嬉しくてたまらない。

独占欲なんだと思う。
美衣子は俺のものだって、強く思うんだ。

今はまだ、少し膨らんだだけのお腹。
すぐにもっともっと大きくなっていくのだろう。

俺はそんな美衣子の隣に立って、皆んなに自慢したい。
ここに俺の子がいるんだぞ!って。