「アリス?」



「……ん」



じっと莉生を見つめていると。



「どした? 俺に惚れた、とか言うなよ」



「惚れてない」



「ま、そうだよな」



「小さい頃、お父さんにこうやって乾かしてもらったなーと思って」



「……ふーん、父親に会いたくなった?」



「まさか、世界で一番会いたくない人だし」



「そっか」



軽く聞き流してくれる莉生に救われる。



口は悪いけど、莉生は優しい。



立ち入ってほしくないことにを、深く聞いてきたりはしない。



それなのに、いつでも丸ごと受け止めてくれる。



「それより、莉生……」



中間テストの範囲を聞こうとした瞬間、私の髪を乾かしている莉生の人差し指が、私の首筋をつつっと滑って。



「あっ……、ひゃうっ!」



変な声がもれた。



くすぐったくて、首を縮めると、莉生が深―いため息をつく。



「あのさ……、お前、そういう声、出すなよ」



呆れる莉生に、眉をよせる。



「……は? どんな声?」



「ゾウリムシみたいな声」



はあああああ⁈



ゾウリムシってなに⁈



「だって、くすぐったかったんだもん! そもそもゾウリムシって単細胞生物じゃん! 鳴かないじゃん!」



「だから! エロい声だすなってこと!」



「え、エロくないし! くすぐったかっただけだもん!」



変な触り方した莉生がいけないのに!



「すぐムキになるなよ。子供か!」



「ムキになってないし! っていうか、莉生の方が子供じゃん!」



「はいはい、俺はバカですよー」



そう言って肩をすくめた莉生を、じっと見つめる。



「……ホントに?」



「は?」



動きを止めた莉生を、じいーーっと見つめる。



「あのさ、莉生って、ホントにバカなの?」



すると、莉生が怪訝な顔で、私を見据える。



「お前さ、それって本人に聞くことじゃないだろ。『はい、俺はバカです』とか、答えにくいだろ」



そっか、たしかに。



「バカなのは、アリスだよ」



にかっと笑った莉生の両手に、むぎゅっと頬っぺたを挟まれた!



っていうか、顔、近い‼