「光栄? ねえ、光栄? 花音たら、早起きしてえ、ずっとここで水島くんのこと、待ってたの。褒めてくれてもいいんだよっ」



家バレしてるとか、めちゃくちゃ憂鬱だけど。



今までちゃんと蛭沼と向き合ってこなかった俺が悪い。



「あのさ、蛭沼」



じっと蛭沼を見つめると、なにを勘違いしたのか蛭沼が目を輝かせる。



「花音って呼んで、莉生くんっ。告白ならいつでもOKだおっ」



「俺、好きな奴がいる。蛭沼じゃない別のやつ。そいつのことが、だれよりも大事なんだよ。


だから、俺は蛭沼の気持ちには応えられないし、こういうことされても困る。ごめんな。けど、これがずっと蛭沼に伝えたかったこと」



「え、ちょ、ちょっと、花音、よく意味がわからないんだけどっ」



「わからないふりしてるだけだろ。俺は、お前のことは好きじゃない。だから、もうこういうこと、しないでほしい。休み時間のたびに、俺の席に来られるのも困る」



それだけ伝えると、蛭沼は表情を豹変させて、ふんっと鼻をならして去っていった。



かなりキツイ言葉を蛭沼に投げつけたことは、わかってる。



けど、これ以上、蛭沼の相手はできない。



その日以来、ぱったり蛭沼は俺の席には来なくなった。