「春宮さん、さようなら」



「さようなら」



帰り支度を終えて教室から出ていくクラスメイトに、笑顔を浮かべて手を振り返す。



蕪村さんが帰るタイミングで話しかけてみようかな。



そんなことを考えながら、スマホを鞄から取り出したところで、廊下から耳をつんざくような高い悲鳴が響いてきた。



「F組の水島莉生(みずしま りお)くんが、うちのクラスの前にいるって!」



「水島くんが⁈」



「きゃ、きゃあああ~~~」



水島莉生を見るためだけに、女子の大群が前後の扉に押し寄せて、大変なことになっている。