お母さんが仕事の日には、お互いテキトーに夕飯を済まそうって話だったのに、気が付けば料理を極めたいという莉生が積極的に作ってくれるようになった。



お母さんが買い物や掃除洗濯をしてくれるだけで助かるからって莉生は言うけど、お母さんは結構気にしてる。



「今夜はかつ丼?」



「そうだよ、作ってやるよ」



「うわっ! 莉生大好きっ! 莉生が弟でホント良かった! もはや莉生じゃないと無理!」



「ウオッホ、ゴホッ、ゴホッ……黙れ、うっせ」



「……大丈夫?」



「な、なんでもねえよっ! 勉強しすぎて、疲れたんだよっ」



……え? あれだけしか、問題解いてないのに?



「あのさ、莉生。真面目な話、塾とか通ったほうがいいんじゃない? うちの学校って、進級審査、厳しいって聞いたよ?」



一緒に勉強しよーって、声をかけてくるわりには、全然集中してないし。あんまり問題も解いてない。



さすがに心配になるよ。



「うるせ、うわっ、熱ぃっ!」



「大丈夫? 手伝おうか?」



「いいんだよ! アリスはこっちに来るな、近寄るな!」



「ひっどい」



「料理に集中したいんだよっ!」



「そっか、莉生は天才料理人だからねっ」



ふにゃっと笑って、ぎゅっと目をつぶると、莉生が「はああああっ」と長い息をはいてしゃがみこんだ。



んん?



「莉生、大丈夫?」



「……なんでもない」



って、答えた莉生の顔はなんだか赤いけど。



ま、いっか!