……わーん、また失敗した!



もう、どうして莉生が怒ってるのか、わからなくなってきた……。



ソファに膝を抱えて座って、視線を落とす。



どうしたら、よかったんだろう。



グラタン、美味しくなかったのかな?



一緒に勉強する?って聞いても、断られちゃったし。



莉生は、ずっと部屋にこもりっぱなし。



明日も、莉生の好きなもの作ってみようかな……。



どうしたら、莉生、機嫌なおしてくれるんだろう。



そんなことを考えながら、スマホでレシピを検索して、その手を止める。



あれ、そう言えば……。



ここに来た頃、私も、今の莉生みたいに部屋にこもってたんだっけ。



リビングもダイニングも、自分の家じゃないから落ち着かなくて、全然くつろげな
かった。



早く高校を卒業して、一日も早くこの家を出て行こうって、そんなことばかりを考
えていた。



でも、莉生がご飯を作ってくれるようになって、その度に声かけてくれて。



さすがにご飯を作ってもらって断るのも悪いし、それで莉生と一緒に食べるようになったんだ。



「美味い弁当つくってやるから、交換条件で勉強教えろ」



って言われて、食事の後に一緒に勉強するようになって。



気が付けば、好き勝手に言い合いをするようになっていた。



……もしかして、莉生が夕飯を作ってくれたのも、一緒に勉強しようって誘ってくれたのも、



……私の、ため?



あー……、これ、気が付かないほうが良かったかも……。



急にドキドキしはじめた心臓の音がうるさくて、ぎゅっと口をむすんで、赤く染まり始めた顔をふせた。