「あのさ、莉生……」



「な、なんだよっ⁈」



挙動不審に、視線を浮かせる莉生をじっと見つめる。



「……あのね、カンニングとか、よくないよ?」



「…………は?」



「だからさ、いくら勉強できないからって、人の答えを見たりするのはどうかと思う」



「カンニングなんて、するか、バカ!」



「だって、おかしいじゃん! 勉強するのを嫌がる莉生が97点なんておかし
い!」



「俺なりに頑張ったんだよっ」



「えー……怪しい……」



じとっと莉生を訝しむ。



「アリスの教え方が上手なんだろ。アリスに教えてもらうと、めちゃくちゃやる気でるし」



「……ホントに?」



「それは、ホント」



「カンニング、してない?」



「するかよ、バカ!」



莉生と見つめ合い、ホッと胸をなでおろす。



「あはっ、そっか、それなら良かった!」



なにより、少しでも莉生の役に立ててるなら嬉しい。



いつも莉生には甘えてばかりだからし。



安心して、ふにゃっと笑ってぎゅっと目をつぶると、莉生が頭を抱えて転がったしゃがみこむ。



「あー……もう、くっそ可愛い……」



床に向かって、ぶつぶつと呟いている。



「へ?」



「いや、なんでもない。けど、お前、ちょっと反省しとけ」



「なにを? っていうか、なんで私が? むしろ反省しなきゃいけないのは莉生でしょ?」



「いや、お前は俺の理性様にもう少し感謝した方がいい」



「は? 莉生様? なんで、勉強教えてもらってる莉生がそんなに偉そうなの?」



「うっせ、トド」



「トドでいいもーんっ」



「あー……、もう! マジで‼ そういうところな! ちくしょー、あー、もう、くっそ、ムカつく!」



「うわっ、言葉遣いが悪い男子は嫌われるよ」



動きを止めた莉生が、視線をあげる。



「……アリスも俺のこと、キライになる?」



「へ? 莉生のことはキライじゃないよ。だって、弟だもん」



「なんだよそれ」



ムスッとふくれた莉生の頬っぺたをつつく。



「おー、いじけちゃった? 『莉生くん、大好きだよー』って言ってほしかった? 大丈夫だって! 莉生はいつだって、私の可愛い弟なんだからっ!」



いつもの調子で軽口たたくと、莉生の顔色が変わった。



「お前さ、マジで、ふざけすぎ」



バタンとドアを閉めてると、莉生は部屋にこもってしまった。