「どうした、アリス?」



莉生の優しい瞳に見つめられて、「なんでもないよ」って答えたけど。



その穏やかな横顔に、ちょっとだけ胸が痛んだ。




コンビニで買ったアイスを莉生と食べながら家に帰ることにした。



「欲しかったアイス、みつかって良かったな。売り切れ続出なんだろ?」



「うん、ずっと食べたかったから、かなり嬉しい!」



「暑いから溶けちゃう前に早く食べようぜ」



「だねっ」



とりあえずアイス食べて落ち着こう。



パクっと一口食べたところで。



「アリス、ついてる」



へ?



「こっち見て」



ごしごしと頬っぺたを莉生に拭かれて、目をぱちくりさせる。



「なんだよ?」



「う、ううん。なんでもない。なんでもないけど!」



「なんか、怒ってる?」



「怒ってない! 怒ってないけど!」



急にイケメン爆発させて、無駄にドキつかせないでほしいっ!



私のこと、からかってるだけなんだろうけど!



「……なんだよ、俺にトキメクなよ?」



「トキメクか、バカ」



「くくっ、すぐムキになる。ガキか」



むうっ。莉生を置いてスタスタと先を歩くと、莉生に名前を呼ばれて振り返る。



「アリス、ひとくち、ちょうだい」



へ?



莉生の顔が近づいて、莉生がぱくりとわたしが食べてるアイスに、口をつけた。



な、な、な、な!



「私のアイス取らないで! って、口、つけないで!」



言いながら、恥ずかしくて顔がかあっと熱くなる。



こ、これじゃ、間接キスになっちゃうよっ。



「いいだろ、エサやり的な感じなんだろ? アリスが言ったんじゃん」



「そ、そ、そうだけど! このアイス、大好きなのにっ! ちょっと高いのにっ」



「つうか、今度はチョコがついてる」



莉生の指先が、私の唇をすべって、心臓が止まりかける。



なにこれ、新手の殺人?



「触らないで!」



一瞬、遅れて抵抗する。



「うっせ、ガキが」



「私のほうが、姉だから年上だもんっ!」



「どう考えても、精神年齢、アリスの方が低いから、俺が勝ち」



むう、ホントにムカつく!



本当のことだけに、ムカつく!



「はいはい、アリスちゃん、落ち着いて」



ぽんぽんと私の頭をなでる莉生の手をはらう。



悔しいいいい!



「たまには、ドキドキしないと枯れちゃうよ?」



「全然、ドキドキしてないし!」



「はいはい、強がるアリスも可愛いよ」



むっかつくっ!



ドキドキしてるのは、怒ってるせいだし!



「くくっ、ホント、アリス、うける」




そう言って空を仰いで笑った莉生を、後ろから蹴飛ばした。




イケメンだからって、いい気になるな!