翌朝、お母さんはいつも通りだったけど。



なんだか、気まずい。



莉生もいつも通りで、ホッとしたところで。



「くしゅん」と、



莉生がくしゃみをした。



「風邪ひいた?」



「いや、多分、クーラーのせい。学校のクーラー、攻めすぎじゃね?」



「うん、たしかに」



7月に入って蒸し暑い日が増えてはきたけど、とにかく学校のクーラーの設定温度が低すぎる!



先生の体感温度に合わせてるのか、全館空調なのか、居眠り防止のためなのかわからないけど、寒くてたまらない。



ってことで、みんな、セーターやカーディガンを持参して登校している。



いつも通り、莉生より一足早く学校に向かい、クーラーのきき始めた教室で、いつもの紺色のセーターを羽織って首をかしげる。



あれ? 



ぶかぶかだ………



指先まですっぽりと隠れちゃってる。



んん? 



私、痩せた? まさか。



だぼっと大きいセーターに首をかしげていると、私に気づいたあゆみちゃんがニコっと笑う。



「いいね、それ。彼氏の服着てるみたいで可愛いっ!」



「……彼氏?」



その一言で気が付いた。



これ、莉生のセーターだ!



朝、洗い立てのセーター探してて、間違えて莉生のセーターを持ってきちゃったんだ!



「アリス、どうしたの?」



あゆみちゃんに聞かれて「なんでもないよっ」って答えたけど。



うわっ、莉生は大丈夫かな。



莉生、寒がりなんだよなあ。



今朝もくしゃみしてたし。



なるべく学校では接触しないようにしてるけど、さすがにこれは返さなきゃ。



あ、でも、別のセーター持ってきてるかな?



とりあえず、偵察してみよっ。