むすんで、ひらいて、恋をして

莉生の両腕に抱えられたまま、莉生と顔だけ玄関に向けて停止する。



「あ、あら、ご、ごめんなさい。続けて、続けて! お母さん、なにも見てないから!」



「お、お母さん⁈ 今日は夜勤じゃなかったの? って、ち、違う! 違うからね⁈」



って、これ、傍からみたら、抱きしめ合ってるふたりの図⁈



私たち、ふしだら⁈



ち、ち、ち、違うの~~~っ!



お母さん、誤解しないで~~~!



莉生を突き飛ばして、ものすごい勢いです勢いで莉生から離れたものの、お母さんは玄関のうえにおかれた書類を鞄にいれながら笑顔を張りつける。



「ま、まあ、莉生くんだったお母さん、大賛成よ。ふたりが仲良くしてくれたら嬉しいし。その、ちゃんとね、節度~みたいなものを守ってくれれば、全然OKだと思うのよ! この際、いつでもアリスのこともらってやって!」



明らかに動揺しながらも、なぜか笑顔のお母さん。



お母さん、どさくさに紛れて、なに言ってんの⁈



「あのね、お母さん! 私たち、ケンカしてるの! 私たち、めちゃくちゃ仲悪い
の!」



「そうね、そうね。大丈夫よ、なにも見てないから♡ じゃ、お母さん、忘れ物を取りに帰ってきただけだから! ごめんね、あの、ごゆっくり」



ごめんね、じゃなくて‼ ごゆっくりとか、意味わからない‼



お母さんは、それだけ言い残して、忙しなく病院に帰っていった。



扉が閉まると、微妙な沈黙につつまれる。



《莉生と鬼ごっこをしていて、ちょうど捕まったところでした》ってお母さんにメッセージを送ったけど。



真実なのに、かえって怪しい! 



本当のことなのに、これ以上ないほどの下手くそな言い訳臭が漂ってるっ‼



ううっ、どうしよう……。



あー……、もう、顔あつい!



せっかくお風呂入ったのに、汗かいちゃったよ!



莉生は、頭を抱えてソファに座りこんでいる。



あ、頭突きしたところが、まだ痛むのかも。



「あのさ、お母さんに誤解されたと思う?」



莉生に氷のうを渡して、隣に座る。



「んー……、さすがに、鬼ごっこ、は厳しいよな……」



おでこを冷やしながら、莉生が答える。



「……莉生のせいだからね」



「アリスが逃げるから悪いんだろ」



「もー……、私たち、姉弟なのに! お母さんに誤解されたらどうするの~‼」



「……べつに、いいじゃん。血、つながってるわけでもないんだし」



ムスッと莉生が答えたけど。



「そういう問題じゃないでしょ~~!」



わーん、どうしよう~!



トキメキどころか、これじゃ、ストレスによる動悸息切れだよっ! 



健康に悪いよ!



「ほら、アリス。元気だせ」



「どうして莉生になぐさめられなきゃいけないの?」



「あまりに姉貴が残念すぎるから?」



くっそーーー!



ちょっと、顔がよくて料理ができるからって!



サッカーができるからって!