「ごめんね。祐太が作った曲の魅力をみんなに届けたいのに、リハーサルで上手く歌えなくて……」
「上手く歌おうとしなくていいよ。俺は、ただみんなで楽しくステージに立てればそれでいいんだ」
「……祐太」
「重く考えないで。七海ちゃんは1人じゃないよ」
そう言って祐太は私の頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。
「不安な時は、俺らの音しっかり聴いて。俺らが七海ちゃんを支えるから」
祐太のその言葉、みんなの音、それが私を強く支えてくれて。
私は、しっかりと前を向いて歌うことができた。
その夏は、たくさんのフェスティバルに出場。
たくさんステージに立って、たくさん経験を積んだ。
そして季節は過ぎて、バンドを組んであっという間に1年がたった。