「無理して笑わないでいいんです。辛い時は辛いって言ってもいいんですよ」

「え……?」

「エマも昔イジメられていたんです。だから、咲綾先輩の気持ちは痛いぐらいに分かります。イジメられてることを隠そうとする気持ちも、咲綾先輩が今何を思っているのかも全部エマには分かります」

「まさか、エマが?そんなに可愛いのに?」

「可愛いからイジメられるってこともありますよ?」

微笑む彼女の言葉を自慢だと受け取ることはできない。

だって、謙遜する必要がないぐらい彼女は可愛いのだ。

「いじめっ子が上でイジメられっ子が下。いじめっ子が優勢でイジメられっ子が劣勢。そういう構図がそもそもおかしいと思いませんか?人をイジメる行為は犯罪にも値する。そのイジメを苦に自殺する子だっている。ということは、加害者のいじめっ子は犯罪者ですよね?」

「ま、まあその理論で行くならそうだね」

「犯罪を犯した加害者は法で裁かれるべきです。そして、断罪され罪を償う。それが世の中のルールですよね?それなのに、どうしてイジメっ子は裁かれないんでしょう」

「どういうこと?」

「イジメられた方が声を上げないからです。イジメられっ子は自分がイジメられているのを知られたくないから我慢をしてしまう。そのせいで、イジメっ子はますますつけあがる」

「それはそうだけど……声を上げても抗っても無駄なこともあるんだよ」

きっと今折原先生に今の状況を話したところでイジメ問題が解決するとは思えない。

むしろ、先生にチクったと言われてエスカレートする可能性だってある。

親には話せない。余計な心配はかけたくない。