あんなに楽しかった部活。

でも、今は苦痛でしかない。

数メートル離れた場所で輪になって楽しそうにおしゃべりをしているみんな。

あたしは一人でボトルのスポーツドリンクをちびちび飲むことしかすることがない。

体育館の半面はバレー部が使用している。

学年関係なく全員が輪になって休憩を取っている。

あたしのように一人ぼっちの人間はいない。

ひどく惨めな気持ちになってうつむく。

どうしてこんなことになっちゃったんだろ……。

ただあたしはみんなと楽しくバスケットがやりたかったのに。

全員で力を合わせて勝利を手にしたかっただけなのに。

「……え」

すると、突然手に持っていたボトルをひったくられた。

顔を持ち上げると、海荷がいた。

「海荷……なに?」

海荷はニヤニヤとした嫌な笑みを顔面に張り付けた。

ちらりと3年のいる方へ視線を向けると、全員がこちらを見ていた。

嫌な予感がする。

「か、返して?」

手を差し出した瞬間、海荷はボトルを反対にした。

飲み口をあたしの頭に向けて両手でぎゅっと押す。

その瞬間、ボトルの中にたっぷり入っていたスポーツドリンクが頭から首筋にかけて滴った。

「ごっめーん!手が滑っちゃった~!」

海荷の言葉にノエルが「ぎゃははははは!!」と手を叩いて大爆笑する。

その隣にいた瑠偉は「やりすぎだよぉ」と言いながらも口元に笑みを浮かべている。

美香と真子は目を見合わせてぎこちない笑みを浮かべる。

これでハッキリした。

ノエルと海荷と瑠偉はあたしのイジメを楽しんでいる。

そして、力を持つ3人に逆らえず美香と真子は合わせているんだ。

逃げる力も出なかった。

空になったボトルを床に放り投げると、海荷はそれを足で何度も踏みつぶした。

いびつに変形してしまったボトルを蹴り飛ばす。

ボトルが転がっていく。

心がズタズタに引き裂かれたように痛む。

あのボトルはもう使い物にならないだろう。

そして、あのボトルと同じような扱いをあたしはこれからもずっと受け続けるんだろう。

バスケットボール部を引退する、その日まで。