ふたりが出て行った後、部屋のドアノブを何かで巻いているような音がした。

あの二人は本気であたしをこの部屋に閉じ込めて餓死させる気だ。

こんなこと正気の沙汰じゃない。

必死になって体をゆすると足元のゴキブリがスーッとあたりに散らばっていく。

「こっちくんな!!!あっちへいけ!!」

叫ぶことで今にも崩壊してしまいそうな精神を奮い立たせて必死に平静を保とうとする。

全身から漂う強烈な生ごみの匂いが鼻につき何度も嘔気がこみ上げる。

「あたし……ほんとにここで死ぬの?そんなのいや……。絶対に嫌だ……!!」

なんとかしてここから脱出しよう。

ゴキブリまみれの室内であたしは足元に広がる生ごみに視線を落とした。

何か脱出に役立つものが落ちているかもしれない。

必死に視線を左右に振って血眼になって探していると、ふと見覚えのあるものを見つけた。

「あれって……」

ビリビリに破かれたピンク色の包装紙は数日前、マリアがくれたチョコレートの包み紙だった。

「え……」

その近くにはあたしが好きでよく買うグミの袋が落ちている。

「まさか……これ……うちのゴミ?」

そうだ……。今日は水曜日。3日に一回の燃えるごみの日だ。

アイツら……わざわざゴミの集積場まで行ってうちのゴミをここまで運んだの?

どうしてそんな手の込んだことを……?