イジメ返し―連鎖する復讐―

「……ノエルを捨てれば……いいの？」

しばらく考えた後、母の口から出た言葉はあたしに衝撃を与えた。

「……はっ？ちょっ、待ってよ」

聞こえるはずもないのに声に出してしまった。

「アイツを捨てられるのか？」

「……それしか道がないなら仕方がないわ。それに私にはマリアがいる」

「ふっ、お前は最低な女だな。昔から自分のことを一番に考えるどうしようもない女だ」

「あなたの言う通りにするわ。ノエルが帰ってきたら全部話す。あの子には家を出て行ってもらうから」

「そうしろ。どんどんあの男に似てきたアイツの苦しむ顔を見ると、俺は心がスーッと晴れるんだ」

その言葉のあと、エマは動画を停止した。

一気に全身の力が抜けていく。

あたしは……捨てられた？母に……？

あたしは放心状態のまま「なんで……？」と繰り返すことしかできない。

「残念だったね、ノエル。ノエルはもう家族に必要のない存在なんだって。ううん、違うね。ノエルは生まれる前から誰からも必要とされてないんだよ」

「違う、違う……。そんなはずない……！！あたしは……」

あたしは必要とされている。

「へぇ。じゃあ、誰に必要とされてるっていうの？」

咲綾の言葉にあたしは必死にあたしを必要としてくれている人間を思い浮かべた。

真っ先に浮かんだのは祐ちゃんだった。

でも、この間祐ちゃんが公園を去って以来連絡を取っていない。

祐ちゃんは今も怒っているんだろうか……？

いや、けれど祐ちゃんのことだ。

あたしがちゃんと謝れば許してくれる。

あたしと祐ちゃんの間には目には見えない絆がある。