イジメ返し―連鎖する復讐―

「ただいま」

初めて来る客にいつも驚かれるぐらい広い玄関には男性ものの黒い革靴があった。

イタリアを代表する靴ブランドのもので一足３０万はくだらないオーダーメイドの靴だ。

珍しい。

まだ１９時を回ったところだというのにもう父が帰っているようだ。

すると、突然パタパタとスリッパを鳴らして母がリビングから飛び出してきた。

その顔は険しくどこか怒りを含んでいる。

「ノエル……お父さんが呼んでるわ」

「なに？あたし疲れてるんだけど」

「いいから来なさい……！」

母に腕をひかれリビングにやってくると父がこちらに目を向ける。

その目はまるで汚いものでも見るかのようにひどく冷めきっていた。

「これはいったいどういうつもりだ」

父は怒気を含んだ声で言うと、何かをあたしに投げつけてきた。

「な、なに！？」

薄っぺらい何かがあたしの体にぶつかり足元に散らばる。

それを拾い上げて目を見開く。

「これ……」

それはさっき祐ちゃんに見られた動画の写真だった。

沙綾を痛めつけているところが写真におさめらえている。

「これが今日、俺の務める病院の医局に届いた。それだけじゃない。院長にもこれと同じものが届いている」

「は？なんで……」

「なんで、だと？ここに写っているのはお前だろう。何を寝ぼけたことを言っているんだ」

父はしきりに貧乏ゆすりをして落ち着かない様子だ。