イジメ返し―連鎖する復讐―

あたしはそれを拾い上げると、立ち上がり先生に向けた。

「ふざけないで。おばあちゃんを殺しておいて何が幸せになろうよ。アンタと心中するなんて死んでも嫌!!」

「瑠偉……お前まで俺を裏切るのか!?幸美のようにお前まで!!」

血走った目であたしを睨み付ける先生。

「奥さんに裏切られたのはアンタがいろんな女と不倫してたからじゃない!あたしのせいじゃない!!」

「こんなことしてただですむと思うなよ!!」

「形勢逆転されたからって負け惜しみ?パトカーの音が聞こえたでしょ!?おばあちゃんを殺した罪でアンタの罪はさらに重くなる」

一分でも一秒でも長く先生を引きつけなくてはならない。

ナイフを持っているのはあたしとはいえ、相手は男だ。

分が悪い。

「瑠偉……お前も裏切り者だったのか。やっぱりお前は俺を裏切っていたんだなぁ」

「……は?」

「神様は俺にこんなものまでよこしたんだ!!」

先生はポケットから取り出した何かをあたしに放り投げた。

「写真……?」

そこには笑顔で腕を組むカップルが映っていた。

それは間違いなくあたしと照くんだった。

「なにこれ……。隠し撮り……?誰がこれを……」

写真の裏側には【裏切り者には制裁を】と新聞を切り取ったような文字が貼り付けられていた。

「お前は一度俺を裏切った。でも、俺は広い心を持ってお前を許そうとしていたのに今度は俺にナイフを向けるなんて……。俺はお前を許さない」

先生はそう言うと立ち上がりあたしにジリジリと迫ってきた。

「止まって。止まらなかったら先生のこと刺すよ……?」

「やれるものならやってみろ。神様はいつだって俺の味方だ」

先生は不敵な笑みを浮かべてポケットに手を入れた。

「なっ……」

「こっちのほうが刃渡りが長いんだよ、瑠偉。お前の負けだ」

先生の手にはあたしのものより大ぶりなサバイバルナイフが握られていた。