イジメ返し―連鎖する復讐―

「だから、強引に家に上がり込んだら警察呼ぶって騒いでさ。で、ババアは
風呂場に逃げ込んだら慌てすぎて自分で転んで頭を打つ始末だよ。でも、そのときはまだ意識があったんだ」

「おばあちゃんに……何をしたの……」

全身がガタガタと震える。

「俺が瑠偉と出て行くって話をしたらババアの奴反対しやがったんだ。『瑠偉ちゃんは私が守ります。ちゃんと幸せにします』とかなんとか言いやがってよぉ。だから、イライラして首絞めたらすぐに死んじまったよ」

おばあちゃんの首筋には確かに何かで閉められたような紫色のあざが出来ていた。

「俺と瑠偉の逃避行にババアは邪魔でしかないからな。俺が始末しておいた。そのせいで体中がしょんべんくさくなっちまったよ」

先生がうちにやってきたときのあの匂いはおばあちゃんの排泄物の匂いだったの……?

「家の北側にババアを埋める穴を掘っている間に瑠偉が帰ってきたときは焦ったけどまあ結果オーライってやつだ」

先生はあたしが学校に行っている間にうちに来ておばあちゃんを殺した。

そして、あたしが家に着いたときも先生は北側の庭で穴を掘っていた……。

どうして気付かなかったんだろう。どうして……。


「ううっ……」

猛烈な吐き気になすすべもなく、あたしはその場で盛大におう吐した。

「おいおい、瑠偉。きたねぇなぁ」

先生が顔を歪めてあたしを非難する。

何度も込み上げてくる吐き気に俯いて肩を上下させていると、おばあちゃんの手のひらに何かが握られているのが分かった。

吐しゃ物で汚れてしまった手でそれを引っ張り出す。

カレンダーを切って作ったメモ用紙にはこう記されていた。

『瑠偉ちゃんのたんじょうび。わすれない。けえきをとりにいく』

「ハァ……ハァ……」

うまく息ができない。

床に両手をつき過呼吸に喘ぎながら目をつぶる。