イジメ返し―連鎖する復讐―

「ただいまぁ。おばあちゃーん?」

家の中に祖母の姿はなかった。

買い物に行っているんだろうか。

麦茶を取り出すために冷蔵庫を開けて苦笑する。

「だから、夕飯いらないって言ってんのに」

冷蔵庫の中には調理済みの煮物やハンバーグやポテトサラダなどが綺麗に並べられていた。

おばあちゃんは毎年誕生日には決まってあたしの大好物を用意してくれる。

そして、必ず駅近くにあるケーキ屋さんで小さなホールのケーキを買ってくる。

認知症は進行しているし、忘れていることもたくさんあるのにあたしの誕生日と好きなものだけは忘れないでくれた。

いつも座っている場所におばあちゃんがいないだけでなんだかやけに寂しい気持ちになる。

両親が離婚後、母方の祖母があたしを引き取りたいと名乗りをあげてくれた。

離婚の前年に祖父が他界して独り身となったおばあちゃんは「瑠偉ちゃんがいればおばあちゃんは寂しくないよ」と嬉しそうに頭を撫でてくれた。

本来ならばもっと大事にしなくてはいけないのかもしれない。

でも、いつも心のどこかで祖母を攻める気持ちがあった。

『おばあちゃんの娘は他の男を選んであたしを捨てた。そんな人間に育てたのはおばあちゃんが悪い』

そんな風に思っていた。

でも、本当にそうなんだろうか。そろそろ母と祖母を切り離して考えなくてはいけないのかもしれない。