イジメ返し―連鎖する復讐―

「なんなのよ……。マジでバカバカしいんだけど」

頬が引きつる。

今までだって友達とケンカをしたことは何度もあるし、傷付けたことだってある。

なのにどうしてだろう。

今日に限って胸が痛むなんて。

そういえばあんなふうに友達に誕生日をお祝いしてもらったことって一度もなかったように思う。

「誕生日おめでとう」って言葉をかけてもらったことはあったけど、あんなふうにあたしのためだけに準備をしてくれたのは唯だけだった。

「瑠偉って可哀想な子。せっかくできた大切な友達との絆を自ら壊しちゃうなんて」

隣から声がしてハッと顔を持ち上げると、咲綾がニヤニヤした表情でこちらを見つめていた。

「うるさいなぁ。アンタには関係ないでしょ」

「まあね。でも、人を傷付けたからには自分も傷付けられる覚悟を持たないとね」

「……は?」

「因果応報ってこと。人にやった酷いことは周り回って自分に帰ってくるんだよ。エマ、行こう」

その言葉を残して咲綾とエマが席を立った。

咲綾を追いかけることはしなかった。

そこまでする気力が今のあたしには残っていなかった。

なにもかもがめんどくさい。

「マジだるっ」

今度こそ立ち上がり店を後にする。

「ハァ。マジでどいつもこいつも使えないんだけど」

歩きながら遊べそうな男を誘うものの、ひとりもつかまらない。

急に焦燥感が全身を駆け巡ってくる。

「因果応報なんてあるわけないでしょ」

咲綾の言葉が脳裏に蘇り、あたしは足を踏み鳴らして歩いた。