「じゃあ」

「う、うん!ノエル、バイバイ!」

分かれ道に差し掛かるとブンブンっと手を振るあたしに目をくれることなくノエルが歩き出す。

「……ハァ。疲れたぁ」

その姿が見えなくなると、あたしは盛大な溜息をついた。

張り詰めていた糸が一気に緩んでどっと疲れが押し寄せてくる。

今日も無事に一日を終えることができたとホッと胸を撫で下ろす。

中学生の時、あたしはクラスの女子から壮絶なイジメにあった。

ちょっとした友達同士のいざこざがエスカレートし、あたしはいつしか悪者に仕立て上げられていた。

しかも、その相手が悪かった。

当時スクールカーストのトップだった女子に嫌われてしまったのが運の尽き。

すぐにクラスから孤立し、無視され、悪口を言われ、物を捨てられ、壊された。

抵抗することなんてできないぐらいにやり込められ、保健室登校になるのに時間はかからなかった。

思い出したくないぐらいの黒歴史。あたしにとって中学時代の良い思い出なんて皆無だ。

高校入試に成功し、この学校に通うと決まったときあたしは誓った。

同じ(てつ)は踏まない。

長い物には巻かれろ。

自分の意見を押し殺してでも強い人間のそばにくっつく。

そして、相手の顔色を伺いながら一緒にいる。

それがあたしが学校生活を快適に送ることができる確かな方法だった。