『……奈月?』
「もう大丈夫だから、次のアトラクション乗ろ? めいいっぱい楽しむためにもここではたくさんの乗り物に乗りたいし」
急に元気になった私にレイはパチパチと目を瞬かせると、ふっと唇の端に笑みを浮かべた。
それからすくっと立ち上がり、こちらを振り返った。
『次どこ行く? 今度は奈月が決めたら?』
「え……うーん、どこに行きたいだろう……?」
私は少し首を傾げ、パンフレットに記載された館内図に目を落とした。
「んー……。私どこ行きたいとか、ないかも……」
『へー? なんで。奈月って遊園地に憧れてたんじゃなかったっけ?』
レイが不思議そうに首を傾げるので、私は少し考えてから声を発した。
「えっとね。遊園地への憧れっていうのは、遊園地に行ったら何をしたいかってことよりも、遊園地という場所に憧れていたって言う感じ。だから遊園地に行ったら何に乗りたいとか、今まで考えたことなかったから……」
『へー。そうだったんだ?』
レイは納得したようにうなずくと、にこやかな笑みを浮かべた。
『じゃあ、奈月はミーハーってこと?』
「……は。うっざ」
からかうような口調に、ムッと顔をしかめた。
……でも、そうかもしれない。
自分いないものを妬んで欲しくなるってことが、少なくない、……かもしれない。
でも認めるのは何だか悔しくて、私は半ばやけくそで目に入ったアトラクション名を呟いた。
「……お化け屋敷。お化け屋敷行こう」
『お化け屋敷か……』
「な、何……文句ある?」
言うとレイは数秒考えて。
それからにこやかな笑みを浮かべた。


