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自宅へ戻ると、お店を早仕舞いにしてきた両親はすでに出かける準備を終えていた。


3日分の着替えを入れたボストンバッグを見ると、途端に電話の内容がリアルに突きつけられている気分になる。


「戸締りと火のものはちゃんとしてね」


「わかってる」


「なにかあったらすぐに連絡するのよ」


「うん」


「あと、なにか言い忘れてないかしら」


「お母さん、あたしは大丈夫だから早くおばあちゃんのところへ行ってあげて」


そう言って背中を押すと、ようやく両親は出かけて行った。


見送り、玄関のカギをかけて誰もいないリビングへ入ると、途端に寒々しさを感じる。