そして汚いものでも見るような目をして、悲鳴を上げ、家の中に逃げ込んでしまった。


あの時のことは今でも胸に突き刺さっている。


どうして愛ちゃんが俺に向かってあんな態度をとったのかもわからなかった。


その時の俺は気が動転して逃げてしまったが、悪いことなどなにもしてないと胸を張って言うことができる。


だから、今回はなっちゃんに声をかけなかった。


なっちゃんの後を慎重に追いかけるだけだ。


なっちゃんの足取りは軽くて、学校生活を楽しんでいる様子がわかった。


あのインツタだって、友達の写真で埋め尽くされている。


と、その時なっちゃんが自分のお腹に触れて「少し痩せないとなぁ」と呟いた。


インツタで見たときも、実際になっちゃんを目にしている今も、なっちゃんの体系は十分にスレンダーだ。


つい「そのままで十分だよ」と、声に出して言ってしまった。


ハッとして身を潜めると、なっちゃんがビックリした表情で周囲を確認し始めた。


でも幸い俺の存在には気がつかなかったみたいだ。


今日はもう、これ以上はやめておいたほうがいいかもしれない。


1度なっちゃんの家まで戻って郵便物を確認して、本名を知ることができればそれで十分だ。


俺はそっと身を翻して、来た道を戻り始めたのだった。