まるであたしたちには離れていた期間なんてなかったかのように感じられるくらい、楽しい時間だ。


「もうこんな時間か」


スマホを取り出して靖くんが目を見開いた。


横から確認してみると、夜の8時を過ぎている。


さすがにこれ以上帰宅が遅くなると怒られてしまう。


だけどまだ帰りたくなくて、靖くんを引き止めたい気持ちでいっぱいだ。


それをグッと押し込めてあたしは笑顔になった。


靖くんとはこの1度きりで終わらせる気はなかった。


これからもデートを重ねていきたいと思っている。


なのに……。


「今日は久しぶりに楽しかったよ、ありがとう」


靖くんが立ち止まってそう言った。


あたしは笑顔のまま左右に首をふる。


「こっちこそ、ありがとう。それで、次なんだけどいつ会う?」


自然と出てきた言葉に自分自身が驚いた。


こんなに積極的になれるとは思っていなかった。


それくらい、手放したくない人なのだと理解した。


しかし靖くんは途端に寂しげな表情になり左右に首を振ったのだ。


「ごめん。もう会うことはできない」


「え?」


あたしは瞬きをして靖くんを見つめる。