小学校の頃はこれくらいの距離ですでに呼吸が苦しくなっていたが、今度はそんなこともなかった。


むしろ、自分が恋愛アレルギーだったことも忘れるくらい、楽しい時間を過ごすことができたのだ。


「映画、面白かったね」


2時間映画を見て映画館を出たときには、あたしの船見くんの距離は更に縮まっていた。


船見くんの手にはパンフレットが2冊。


あたしは自分で持つと言ったのだけれど、船見くんが持ってくれたのだ。


「そうだね。あの2人が幸せになってくれてよかった!」


映画の内容は本当に面白くて、2人の幼馴染が紆余曲折ありながらも最後には結ば
れる、ハッピーエンドの物語だった。


途中で主人公たちを邪魔してくる女の子も実は過去につらい経験があり、男の子が助けてくれていたというくだりがあった。


一見悪役でもちゃんと過去を掘り下げて描かれているので安心して見ることもできた。


「手、つないでいい?」


一生懸命映画の内容を話していたとき、船見くんが右手を差し出してきた。


「え?」


「いやなら、我慢する」