「そうなの?」


「そうだよ。好きな人ができるとみんな胸がドキドキするし、照れて顔が熱くなるよ?」


「あたしだけじゃないくて?」


質問すると咲子は大きく左右に首を振った。


そうだったんだ……。


アレルギー症状と恋が原因で起こる現象について、あたしには境目がわからなかった。


呼吸困難になったときも心臓はドキドキしていたし、熱っぽさもあったせいだ。


「とにかく、倒れるまで行かなければ大丈夫だと思うよ?」


「そうなのかな……」


あたしとしては倒れるまで我慢しているつもりはなかった。


そんなことをして誰かに迷惑をかけたり、悪目立ちしてしまうと本末転倒だ。


「とにかくさ、少し船見くんに声をかけたりして距離を縮めてみればどうかな?」


「距離を縮める?」


今でも心臓がドキドキして危険な状態なのに、そんなことができるとは思わなかった。


「船見くんと仲良くしてみて、それでも倒れることがなければアレルギーは治ってるってことになるよね?」


「それは、そうかもしれないけど……」


あたしはまたうつむいてしまった。


アレルギーが治ったような気はしていないし、なにより自分から船見くんに声をかける勇気がない。